2016年次総会「征服者となりなさい」 - ゲリト・レッシュ

テキスト

英語の「征服者」という言葉は、征服した者を意味します。

征服するとは、「だれかあるいは何かを打ち負かす」ことです。

16世紀にアメリカの多くの部分を征服したスペインの探検家や戦士たちは、コンキスタドール、つまり征服者と呼ばれています。

そのうちの一人エルナン・コルテスは、アステカ帝国を征服しました。

その最盛期にスペイン王国は750万平方マイル、つまり1940万平方キロに及ぶ土地を支配していました。

しかし、スペインよりも広い土地を支配したのはだれでしたか?

蒙古と大英帝国です。

最盛期において大英帝国は史上最大の帝国として知られ、その版図は1300万平方マイル、すなわち3370万平方キロに及びました。

それは地球の全陸地のほぼ4分の1に相当します。

海外の土地を征服したにもかかわらず、蒙古のフビライ・ハンの征服した土地よりもわずかに広いものでした。

大英帝国は海外の土地を持っていたため、より大きな土地を所有していたのです。

蒙古は今日モンゴルとして知られる草原出身の遊牧民で、中央アジアや北東アジアにありました。

西暦13世紀ごろに始まったその素早い征服は、アジアとヨーロッパの半分に多大の影響を与えました。

蒙古はわずか25年で、ローマが4世紀かかって征服した土地よりも、多くの土地の人々を服従させたのです。

その絶頂期にはベトナムからハンガリーまでの、(距離にして5500マイル、つまり8700キロに及ぶ)土地と、シベリアからインドまでを支配しました。

それは、現代を含めこれまでの史上最大の一続きの土地となっています。

次いで、自分を世界の征服者とみなしたヒトラーがいます。

彼は次のスローガンを叫びました。

「今日はドイツが我々のもの、明日は全世界が我々のもの」

彼の世界制覇の目論見は、みじめな結果となりました。

聖書時代の征服についてはどうですか?

西暦前1513年、イスラエルがエジプトを脱出したのち、エホバはイスラエルにカナンの地を征服するようにと言われました。

彼らは恐れてそうしませんでした。

モーセのほかにはヨシュアとカレブだけが意欲的でした。

民数記 13章30節はこう述べています。

「その時カレブは民をモーセの前で静まらせようとし、つづいてこう言った、『すぐに上って行きましょう。わたしたちは必ずそれを手に入れることになります。間違いなくそれに打ち勝てるのです』」

信仰の欠如ゆえに、イスラエルは荒野を40年間さまよわねばなりませんでした。

その後、約5年の間にイスラエルはカナンの地を征服しました。

エホシャファト王の時代に、エホバはアンモン、モアブ、セイルの、エドムの諸国民の同盟に対する勝利をもたらされました。

イスラエルは自分の力によって勝利したわけではありません。

エホバが敵の同盟を混乱に陥れ、同士打ちをするようにして勝利をもたらされました。

歴代第二 20章1-4節にある通りです。

終わりの時における征服についてはどうですか?

蒙古や大英帝国よりも広い範囲を征服する征服者についてご存じですか?

啓示 6章2節に答えを見いだせます。

その征服者についてこうあります。

「そして、見ると、見よ、白い馬がいた。それに乗っている者は弓を持っていた。そして彼に冠が与えられ」

これはイエスのことですね。

「彼は征服しに、また征服を完了するために出て行った」

今やイエスは全地を支配しています。

征服のためにいつ出て行きましたか?

西暦1914年です。

いつ征服を完了しますか?

ハルマゲドンの時です。

イエスはすでにだれを征服しましたか?

最初に サタンと悪霊たちです

彼らを天から投げ落とし、その活動領域を地とその周辺に限定しました。

その戦いについては、啓示 12章に記されています。

しかし その征服は1914年に完了したわけではありません。

ハルマゲドンで完了するでしょう。

サタンは無活動の底知れぬ深みに投げ込まれ、予告されていた千年の終わりには完全に滅ぼされるのです。

何という征服でしょう!

ハルマゲドンにおいて、人間のあらゆる政府も同様に征服されるでしょう。

啓示 17章14節を開いて、次の預言の言葉を読んでみましょう。

こうあります。

「これらの者は子羊と戦うであろう。しかし子羊は、主の主、王の王であるので、彼らを征服する。また、召され、選ばれた忠実な者たち」

つまり油そそがれたクリスチャンたちも

「彼と共に征服する」

霊的な征服についてはどうですか?

啓示 2章と3章でイエスは油そそがれた者たちに関連して、7回ほど「征服する者」と述べています。

その一例は啓示 3章21節です。

「征服する者には、わたしと共にわたしの座に座することを許そう。わたしが征服して、わたしの父と共にその座に座したのと同様である」

油そそがれた者は、どのようにハルマゲドン前の今でも征服しますか?

エホバに忠節であり続けることにより、またエホバとイエスに対する信仰と愛とによって征服するのです。

また日々の生活で善を行なって悪を征服します。

啓示 7章で述べられている、「大群衆」についてはどうですか?

メシア王国の下での地の状態について、啓示 21章6, 7節はこう述べています。

「だれでも渇いている者に、わたしは命の水の泉から価なしに与える。だれでも征服する者はこれらのものを受け継ぎ、わたしはその神となり、彼はわたしの子となるであろう」

ですから「啓示の書の最高潮」の本はその304ページで、「大群衆もまた征服しなければなりません」と述べているのです。

子どもでも征服者になれます。

子どもはきょうだいから押されたりすると、大抵は押し返すものです。

残念ながらこれは子どもに限ったことではなく、多くの大人も同様です。

だれかに傷つけられると、やり返したくなるのです。

幸いほとんどの大人は文字どおり押し返しはしませんが、もっと巧妙に仕返しをします。

どんな手段を用いるにせよ、意図は同じです。

仕返しです。

仕返しをする衝動は根強いものですが、真のクリスチャンはその衝動に負けてはなりません。

むしろ、ローマ 12章17節の、使徒パウロの次の勧めに従うようにします。

「だれに対しても、悪に悪を返してはなりません」

パウロは日々の生活において、征服する方法を詳しく説明しました。

ローマ 12章20, 21節でこう書きました。

「『あなたの敵が飢えているなら食べさせなさい。渇いているなら、飲む物を与えなさい。そうすれば燃える炭火を、彼の頭に積むことになるのである』。悪に征服されてはなりません。むしろ善をもって、悪を征服してゆきなさい」

再び子どもについてです。

きょうだいやクラスメートが嫌なことをしたり言ったりしたなら、どのように善をもって悪を征服できますか?

仕返しをしないことによってです。

この世のわらべ歌にこういうのがあります。

「打たれれば打ち返す。犬を殺されたら、猫を殺し返す」

しかし、イエスは許すようにと言われました。

善いことを行なって、ほかの子たちのために祈るのです。

他の子が失敗をしたからと言って、自分も同じ失敗をする必要はありませんね。

エホバは仕返しを望んでおられません。

テサロニケ第一 5章15節にはこうあります。

「だれも、まただれに対しても、危害に危害を返すことのないようにしなさい。むしろ、互いに対し、また他のすべての人に対して。常に良いことを追い求めなさい」

では、子どもの皆さん、善をもって悪を征服したいと思いますか?

そのようにする皆さんの努力を褒めたいと思います。

皆さんはそのようにしてエホバの心を喜ばせています。

わたしたち皆は、どのように霊的に征服できますか?

仕返しをしないことによってです。

それは愛を示すことです。

ひどい仕打ちを受けたにもかかわらず、何十年にもわたりクリスチャンの配偶者が善を行なったゆえに、真理に入った未信者は大勢います。

家庭内で夫が妻の信仰にいやみを言ったり、言葉を荒げたりしても、妻が夫に純粋な親切を示すなら、一触即発の事態を避けることができるかもしれません。

そのような姉妹たちは、善をもって悪を征服しています。

未信者の配偶者のことで、あきらめない態度を示している皆さんすべては称賛に値します。

自分をひどく扱う人に理解と同情を示すなら、その人が聖書やエホバについてさらに学ぶよう、助けることができるかもしれません。

どんな仕打ちを受けても、あなたが柔和で親切な言動で応じるなら、あなたがなぜほかの人と違うかを考える機会を、その人に与えることになります。

ペテロ第一 3章4節は、「もの物静かで温和な霊という朽ちない装い」について述べています。

「もの静かで温和な霊」です。

ある島で、ペンテコステ派の1人の婦人が聖書の研究に応じました。

しかし、夫は当然それを好まず、反対し、長老たちにも脅しをかけました。

しかしその後、夫は病気になって入院し、昏睡状態に陥りました。

やがてその人の意識が戻ったとき、2人の姉妹がスープを持って訪問しました。

夫は、それは妻のためだと思っていました。

姉妹たちは、「いいえ、これはご主人のです」と言いました。

夫は、「とても感動しました」と述べました。

「ペンテコステ派の人はだれも来てくれなかったのに、自分がひどく反対したエホバの証人が、2人で食事をもって来てくれました」

この人は病気から回復して週2回聖書を勉強し、1998年にバプテスマを受けました。

スープにまつわる他の経験もあります。

ロシアである朝 2人の兄弟が、家から家の奉仕をしていました。

2人の自己紹介を聞いたその婦人はその場を離れ、ボルシチのポットを持って戻って来ました。

それは赤かぶのスープですが、それを兄弟たちに浴びせかけ、「二度とうちに来ないで!」と叫びました。

兄弟たちは家に戻って洋服を着替え、活動を続けました。

その日の午後、兄弟たちは市場に行って、ボルシチを作るための材料を注文しました。

その夜、兄弟たちはその同じ婦人を訪問しました。

兄弟たちは今回は伝道のためではなく、家族の食事を弁償するために来たと述べたのです。

婦人が無駄にしたスープは、家族の食事だったのではないかと言いました。

それから購入した材料を婦人に渡しました。

婦人は大変驚き、兄弟たちを中に招き入れ、話を聞きました。

やがてこの婦人との聖書研究が始まりました。

エホバの証人ではない人からひどく扱われるのは予期すべきことです。

しかし、霊的な兄弟姉妹との間で問題が起きると、もっと大きな痛みを感じることがあります。

1人の兄弟はこう言いました。

「私が直面した最大の障害は、エホバの民が完全ではないことを受け入れることでした」

それで仲間のクリスチャン、特に会衆内で特権を得ている人が、思慮に欠けたクリスチャンらしくない行動をするなら傷つきます。

「エホバの民の間でなぜそんなことが生じるのでしょうか?」

実際、そのようなことは使徒の時代の、油そそがれたクリスチャンの間でも生じました。

そういう問題に直面したとき、どう反応すべきですか?

その人たちを許し、祈ることができます。

そのようにして、征服者であることを示せます。

ヨセフを思い起こしてください。

兄弟たちにひどく扱われても、善をもって兄弟たちの悪を征服しました。

それはすべての人、とりわけエホバを喜ばせるものとなりました。

ナチの時代の兄弟たちは強制収容所で、親衛隊の将校からひどい扱いを受けても仕返ししませんでした。

そのため真理を受け入れた親衛隊の将校もいます。

ある将校たちは、兄弟たちにひげをそってもらうのを好みました。

兄弟たちにだけです。

他の囚人にそれをさせると、仕返しのため、のどを切り裂かれて復しゅうされることを恐れていたのです。

12人の姉妹たちはビルケナウの収容所に数日いましたが、その後、親衛隊の将校たちの家で働くために、アウシュビッツの収容所に連れてこられました。

エホバの証人だけにそうさせたのです。

将校たちは他の者が家族の中で働くのを好みませんでした。

姉妹たちが家族を害することはない、と確信していたのです。

わたしは1960年代にオーストリアのイエンバハで、フランツ・デッシュ兄弟に会いました。

兄弟はグーゼン強制収容所に送られました。

そこで親衛隊の将校と聖書を研究しました。

進歩が見られたでしょうか?

数年後、2人がある大会で兄弟として再会したときの、大きな喜びを想像してみてください。

では、今日の反対を征服することについて考えましょう。

この邪悪な体制での生活の圧力に、人々は怒りを感じています。

わたしたちは親切で平和的で法律に従いますが、エホバの敵は悪意のある攻撃を仕掛けています。

例えばロシアなどではそうです。

報道を通して、また法廷で、中傷がなされています。

神の民の活動を禁令下に置く政府もあります。

弟子たちはそれを予期すべきである、とイエスは語られました。

将来、大患難が一層近づくにつれ、さらに多くの反対に直面することでしょう。

どう反応すべきですか?

ローマ 12章17節は、決して「悪に悪を返しては」ならないと述べています。

悪魔やその手先が何を行なったとしても、「善をもって悪を征服する」なら、立派な証言をすることになります。

重要なかぎは慈しみのある言葉を用いることです。

箴言 25章15節には、「温和な舌は骨をも砕く」とあります。

仕返しをしない点で、イエスは最高の模範です。

使徒ペテロがゲッセマネの園でマルコスの耳を切り落としたとき、イエスはペテロを叱責し、マルコスをいやされました。

イエスはマルコスに善を行ないました。

彼がイエスを捕縛しようとした、暴徒の一味であったにもかかわらずです。

イエスは完全ですが、わたしたちは不完全です。

でも、わたしたちは自分自身を征服しなければなりません。

自分の悪い態度や良くない習慣を、征服しなければなりません。

辞書によると、征服するとは、「多大の努力を払って問題や困難を制御する」という意味です。

わたしたちの多くは、真理を受け入れたとき、喫煙やアルコールの飲み過ぎ、また麻薬中毒などを、懸命に努力して克服しました。

またポルノを見るという悪い習慣もあります。

ある調査によるとポルノに関連したEメールの数は1日に25億通に上ると言われています。

それは1分間に170万通に相当します。

ポルノを見るという中毒を克服するには、大いなる努力が求められます。

バプテスマの後でも、食べ過ぎや激しい気性や、うわさ話をする傾向を克服しなければならないかもしれません。

うわさ話とは、真実ではあっても、他の人の消極的なことを話すことです。

また人を過度に恐れることも克服しなければなりません。

エホバへの信仰はそのような恐れに打ち勝つ助けとなります。

政府が神を崇拝する自由を制限するかもしれません。

自分の命さえおぼつかないかもしれません。

しかし人への恐れを克服するかぎは、エホバへの信仰です。

ヨハネ第一 5章5節はこう尋ねています。

「だれが世を征服する者でしょうか?」

「イエスは神の子であるとの信仰を持つ者」ではないでしょうか?

その前の4節はこう述べています。

「わたしたちの信仰、これが世を征服する力となったものです」

比類のない力をお持ちのエホバは、わたしたちに苦労させたり、失敗から学ばせたりすることなく、強制的に弱さを克服させることがおできになります。

どうしてそうされないのでしょうか?

エホバは自由意志という贈り物を与えてくださったのです。

神のご意志を行なうことを選び、努力してご意志を行なうことにより、エホバへの愛とエホバを喜ばせたいとの願いの深さを示せます。

わたしたちは、今すでに征服者です。

イエスは事物の体制の終わりに征服するとは言われませんでした。

イエスは地上におられたとき、すでに征服したと言われました。

ヨハネ 16章33節にはこうあります。

「世にあってあなた方には患難がありますが、勇気を出しなさい!  わたしは世を征服したのです」

その前の節でイエスは、「父が共にいてくださる」と言われました。

ヨハネ 16章32節です。

そうです、エホバの助けがあったのです。

イエスは独りで戦う必要はありませんでした。

わたしたちも同様です。

エホバとイエスはわたしたちの側にいて支えてくださいます。

パウロはこう述べました。

「エホバはわたしの助け主、わたしは恐れない。人がわたしに何をなしえよう」

ヘブライ 13章6節。

世を征服し続けましょう。

一度の勝利で満足してはなりません。

戦い続けるのです。

征服は継続的な行動です。

忍耐が求められます。

コリント第二 4章16節でパウロは、「わたしたちはあきらめません」と述べました。

スペインや蒙古や大英帝国は、1日や1週間でまた1か月で領土を征服したわけではありません。

同様にローマ 12章21節は、

「征服されてはなりません。むしろ、善をもって悪を征服してゆきなさい」

と述べています。

継続が必要なのです。

正誤問題です。

わたしたちはイエスよりも弱くて不完全なので、悪や世を征服できても、サタンを征服することはできない。

誤りです。

ヨハネ第一 2章14節はこう述べています。

「若者たちよ、わたしがあなた方に書くのは、あなた方が強く、神の言葉があなた方のうちにとどまっており」

次の言葉です

「あなた方が邪悪な者を征服したからです」

そうです、弟子たちは1世紀にサタンを征服したのです。

わたしたちも同じようにできます。

サタンの存在を無視するなら、征服することはできません。

間もなくエホバはイエスと油そそがれた者たちによって、サタンと悪霊たちを無活動の深みに投げ込まれます。

千年統治の終わりに、サタンの頭は完全に砕かれるでしょう。

ローマ 16章20節にあるとおりです。

サタンと悪霊たちは神の民を征服することはできません、

彼らは敗北者です、

エホバはイエスに命じて、人間のあらゆる政治体制を「打ち砕いて終わらせ」るのです。

彼らもまた最終的に敗北者となります。

ここでローマ 8章37-39節を読んでみましょう。

すべての忠実な者たちへの励ましです。

こうあります。

「わたしたちは、わたしたちを愛してくださった方によって、これらのすべての事に全く勝利を収めているのです。死も、生も、み使いも、政府も、今あるものも、来たるべきものも、力も、高さも、深さも、またほかのどんな創造物も、わたしたちの主キリスト・イエスにおける神の愛から、わたしたちを引き離しえないことを、わたしは確信しているからです」

振り返ってみましょう。

エホバとイエスと王国に忠節であり続けることによって、霊的な意味で世を征服できます。

信仰と愛を示し、善を行なうことによって、霊的な意味で悪を征服できます。

2番目に、悪い習慣や誤った態度を、霊的な意味で征服することができます。

3番目に、霊的な意味でサタンを征服でき、今でさえそうすることが可能です。

4番目ですが、イエスと油そそがれた者たちは、エホバに反対するサタン、悪霊、そして人間のすべての政府を最終的に、来たるべき大患難の最高潮であるハルマゲドンにおいて、完全に征服するのです。

引き続き征服者であり続けるようにとの何と力強い励ましなのでしょう!

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