大海原を進んでいるヨットのように、人生という航路を楽しんでいるとしましょう。
しかし突然、激しい嵐のような、予想外の問題に直面します。
平穏な生活が、いわば揺さぶられるかもしれません。
「ものみの塔」1896年3月1日号に次のように述べられていたとおりです。
「クリスチャンの自己犠牲の歩みは、たやすいものでも、常に順風満帆で平穏なものでもあり得ない。穏やかななぎの時もあるが、たいていは嵐との闘いなのだ」
これが122年前、ここにいるだれもが生まれるはるか前に真実だったのであれば、現在はなおさらでしょう。
サタンの体制での生活は、順風満帆とはほど遠いものです。
では皆さんは、仲間が今直面している人生の嵐や、将来の嵐に耐えられるようどのように援助できますか?
キールになることです。
どういう意味ですか?
ここで言うキールとは、ヨットの下に付いている重量のある板、センターボードです。
帆に風が激しく吹きつけると船体が傾きますが、キールのおかげで船はバランスを取り戻します。
キールは船を安定させるのです。
ヨットが横に流されたり転覆したりするのを防いでくれます。
兄弟姉妹たちは、これまでになく強めてもらう必要があります。
安定した者となるための助けが必要です。
嵐のような問題や自然災害、あざけりや迫害の波に対処できるようになるためです。
これこそギレアデ学校の目的です。
皆さんのような資格ある人を強め、安定させることで、今度は皆さんがエホバの組織を強め、安定させる側に回れるようにするのです。
エホバの霊によって強められている皆さんは、1世紀当時に兄弟姉妹を強める助けとなったクリスチャンのようになれます。
彼らの働きは、仲間を安定させました。
その例はたくさんありますが、ここでは、使徒 18:24から、アポロのどんな点に見倣えるかを考えてみましょう。
使徒 18章の24節を一緒に読んでみましょう。
こう書かれています。
「さて、アポロという名のユダヤ人で、アレクサンドリア生まれの[どんな人ですか?]雄弁な人がエフェソスに着いた。彼は聖書によく通じていた。この人はエホバの道を口伝えに教えられており」
そして、注目できるのは彼が、「霊に燃えていた」ということです。
それで「イエスに関する事柄を正しく話したり教えたり」できました。
しかし、「ヨハネのバプテスマについて知っているのみであった。そしてこの人は会堂で大胆に話し始めた。プリスキラとアクラは彼の話を聞き[どうしましたか?]、彼を自分たちのところに連れて来て、神の道をより正しく説き明かした」
アポロはなんと優れた特質を持っていたのでしょう。
生徒の皆さんもお持ちの特質です。
アポロには長所がありましたが、わたしたちと同様、弱点もありました。
そして、謙遜に援助を受けて理解を深める必要があることを認識していました。
アクラとプリスキラがその必要を満たしてくれた時、アポロはどれほど感謝したでしょう。
2人が神に関する知識を深めるよう助けたので、アポロはより正確に語れるようになりました。
さらに、霊的に円熟し安定したこの夫婦から、アポロは実際的な教訓を学ぶこともできました。
どんな教訓ですか?
例えば、チームとして一致して働くことです。
さらに、霊的また物質的な援助を必要とする仲間のために、求められる以上のことを進んで行なう、いわば、もう1マイル行くことや、寛大さを示し、人をもてなすとはどういうことか学べました。
また、他の人を支え、自分の割り当てに満足するために、謙遜さが必要であることも学べました。
アポロのように、皆さんはギレアデへの招待を受け入れて特別な訓練を受けることで、神の言葉である聖書の理解を深めました。
その間、皆さんを支援してくれたベテル家族からは、大切で実際的な教訓を学ぶことができました。
人をもてなし、寛大に与え、親切で辛抱強くあるために、もう1マイル行くことを学びました。
受けるだけの人ではなく、与える人になることを学んだのです。
皆さんは間もなく卒業です。
卒業証書を手にします。
それで終わりですか?
学校を離れたら、皆さんの訓練は終わりですか?
そうではありませんね。
ご存じのとおり、エホバは、引き続き教訓を与えると約束しておられます。
実際、ペテロ第一 5章の10節にはこうあります。
ペテロ第一 5:10で、エホバは「あなた方の訓練を終え」ると約束しています。
どのように皆さんの訓練を終えるのでしょうか?
聖句の続きを見ると、引き続き訓練して、「確固とした者強い者としてくださる」とあります。
ですから、ちょうど重量のあるキールがボートを安定させ、水平に保つ働きをするように、エホバも強力な聖霊を与えて、皆さんが強く安定した者となり、また、そうなるよう他の人を援助できるようにもしてくださいます。
さて、アポロは謙遜で援助を受け入れたからこそ、エホバとその組織に強力に用いられるようになりました。
では彼は、当時の諸会衆をどのように助けたのでしょうか?
使徒 18:27をご覧ください。
使徒 18:27によると、アポロはアカイアの会衆をただ助けたのではなく、「大いに助けた」のです。
他の訳では、「大いに強めた」ともあります。
彼は確かに、受けた訓練を真剣に当てはめる人だったのです。
事実、28節から分かるとおり、宣教で熱心さの模範を示しました。
当時手にすることができた聖書を使いました。
それを権威として用いました。
どのように話しましたか?
28節には「熱烈な態度で」とあります。
アポロはつまり、張り切るキールだったということです。
皆さんはきっと、ギレアデで受けた訓練を割り当てられた所で活用して人々を大いに助け、しかも熱烈な態度でそうすることでしょう。
ところで、ヨットを見て、ふつう最初に目につくのは何でしょうか?
帆ですね。
なぜですか?
帆は、ヨットで最も目立つものだからです。
一方、キールは見えません。水面下です。
でも、肝心な役目を果たしています。
ヨットを水平に保ち、支え、安定させています。
さて、アポロがこんなふうに考えているところを想像できますか?
「キールのように支えたり、安定させたりする自分の割り当ては確かに大切だ。でも本来の力をちっとも出せていない気がする。一生懸命やっているのがみんなには見えてないんだ。確かに、使徒ではないし、霊感による手紙を書く特権もない。まぁ、書けるとは思うけどね。いやー、もっと目立つ重要な立場だったらなぁ。そうそう、船の帆、みたいにね。そしたら、よく見えて、みんなからもっと注目されるし、わたしの雄弁な話をみんなが聞けるのに」
あり得ない話ですね。
アポロは決して、そう考えたり、他の人にそのような態度を取ったりはしませんでした。
聖書には、アポロの言動のほんの一部が記録されているにすぎません。
しかし、確かに分かるのは、アポロのとりわけ優れた点が謙遜さだった、ということです。
彼は、どこへ遣わされても、何でも進んで謙遜に行ないました。
自分の長所が短所にならないようにしました。
同じように、生徒の皆さんがこれから行なうことも、その多くは他の人から見えないでしょう。
でも、エホバがすべてを見ておられます。
貴重な羊を世話し、安定した者となるよう助ける働きをすべて見ておられます。
皆さんは、たくさんの賜物、長所、能力をお持ちです。
でも、それらの賜物や長所よりも、謙遜さが際立っていなければなりません。
長所が短所になってしまうことがないようにしてください。
そうです、「能力も 謙遜なければ 逆効果」
逆に、「能力に 謙遜あれば 安定効果」
これが、キールとなる鍵です。
皆さんのこれまでの人生でもきっと、キールとなってくれた人たちがいたことでしょう。
ちょうど必要なときに安定できるよう強めてくれました。
人生の嵐に遭っていた間、寄り添ってくれたのです。
皆さんにとってのアポロはだれでしたか?
だれがアクラまたプリスキラのようでしたか?
その人たちの言葉や行ないを思い出してください。
今度は、あなたが同じような存在になれるのです。
皆さんを安定させ、皆さんのキールとなってくれた人たちがいました。
今度はあなたの番です。
ギレアデで受けた訓練を生かして、兄弟姉妹を大いに助けましょう。
彼らを愛し、支え、強め、安定させましょう。
キールとなってください。