相続財産。
この語は、後世に価値あるものを残していくという考えを含んでいます。
しかし、見過ごされた相続財産とは何でしょうか?
それは知られることのなかった相続財産です。
ですが、自分のことを知らない人たちに、価値あるものを伝えることができるでしょうか?
自分が行なったことを知らない人たちに、影響を与えることなどできるでしょうか?
できます。
ケニ人がそうでした。
彼らは、ヘブライ 11章の「雲のような証人たち」には含まれていません。
それでも、わたしたちに聖書の中で伝えられているその素晴らしい信仰は、黙想してみる価値があります。
彼らの信仰は見過ごされがちですが、エホバにとって、それはとても貴重で忘れられないものです。
これから、ケニ人の相続財産を掘り起こしてみましょう。
皆さんに大切な教訓、とりわけ心を探る教訓を学んでいただきたいと思います。
聖書で最初に出てくるケニ人は、モーセのしゅうとのエテロです。
エホバがイスラエル人をエジプトから解放したことを聞いた時、エテロが何と言ったかに注目してください。
出エジプト記 18:11です。
エテロはこう言いました。
「彼らが民にせん越に振る舞ったこの事から、今わたしは、エホバが他のすべての神々に勝って偉大な方であることをよく知った」
12節によれば、その後エテロはエホバ神に犠牲をささげました。
そうです、ケニ人のエテロは、エホバ神がイスラエル国民を指導していることを理解しました。
そして、エホバが用いているモーセを助けなければならないことに気づきました。
モーセは、およそ300万人の民を指導するという、大変な仕事が与えられていたからです。
そこでエテロは、モーセをサポートしたいと思いました。
サポートです。
モーセが、神に喜ばれる決定を行なえるように援助したのです。
「モーセ、有能で信頼できる男子を選びなさい。そして、彼らを、百人の長、五十人の長、十人の長として立てるのです」
わたしを、ではなく、彼らを、です。
エテロは目立つ立場を求めませんでした。
彼はただ、モーセがエホバ神から与えられた仕事を続けられるよう、役立つアドバイスをして助けたかったのです。
そして、モーセがエホバに祝福されていることは分かっていましたから、エテロは、「流ちょうに話せないのに300万人もの民を指導できるのか。あなたはただの羊飼いじゃないか」などと批判することもありませんでした。
むしろ、「助けになりたい」と言いました。
このケニ人によるサポートのおかげで、モーセだけでなく、神の選ばれた民全体が、大いに助けられました。
最初の重要な教訓はこうです。
エテロのように、他の人をサポートしてください。
無私の気持ちで、です。
立場が変わっても、エホバの目にあなたの価値は変わりません。
忠実なあなたを愛しておられるのです。
忠実さです。立場ではありません。
忠実な奉仕です。立場ではありません。
他の人を批判せず、助けになってください。
兄弟たちの仕事がうまくいくよう助けましょう。
立場や人からの称賛を求める気持ちは有害ですから取り除きましょう。
イエスは、「わたしが自分に栄光を付すのであれば、わたしの栄光はむなしいものです」と言いました。
あなたの生き方によって、個人の栄光ではなく王国が重要であることを実証してください。
それがエテロです。
ケニ人の相続財産はまだあります。
エテロにはホバブという息子がいました。
彼はモーセの義理の兄弟です。
イスラエル人が約束の地へ移動する時が来ると、モーセはあることをホバブに依頼します。
それは民数記、10章に書かれています。
民数記 10:31です。
モーセはこう言いました。
「どうか、わたしたちから離れないでください。わたしたちが荒野でどこに宿営したらよいかをあなたはよく知っているので、あなたには是非ともわたしたちの目となってほしいのです」
モーセはホバブに一緒に来てほしいと言っています。
彼はそこの地形に通じており、水や牧草のある場所など、その地域の全体像を理解していました。
ホバブ、一緒に来て「目」になってください。
あなたの知識とあなたの経験を生かして、この民のガイドになってください。
その経験が必要なんです。
ホバブは、「わたしには家族も友人もいて快適に暮らしている。この人たちに加わる必要があるだろうか?一緒にいたら、どんな目に遭うか分からない」と考えましたか?
いいえ。
何の利益もないのに、ホバブは自分の経験を生かしてガイドとなり、イスラエルが約束の地へ向かうのを助けました。
皆さんにとってどんな大切な教訓がありますか?
この5か月、皆さんは66の書からなる、いわば聖書の地形に通じるようになり、聖書の全体像をつかみました。
創世記から啓示に至るまでです。
歴史、地理、考古学に関するレッスンを毎日受け、テストに次ぐテストでした。
全体像を学びましたね。
では、その経験と知識を活用して、他の人のガイドとして奉仕してください。
例えば、だれかが信仰の危機に直面し、経験したことのない状況で苦しんでいるとします。
乗り越えがたいものかもしれません。
では、真理の水を見いだせる場所を神の言葉から示してください。
さわやかさや活力を与えてくれる神の言葉へ導いてあげてください。
あなたの務めです。
この学校の期間中、皆さんは神の組織の美しさを見てきました。
多くの人は見ることのできないものです。
皆さんの割り当てられた国の多くの人は、皆さんのような経験はできません。
覚えていることや経験したことを分け与えて、他の人がエホバの組織に対する確信を強めるようにしてください。
知識を自分だけのものにしないでください。
2人の人を訓練しましょう。
有用な者とするのです。
それらの人も、別の2人を訓練します。
さらに別の2人、またさらに別の2人です。
考えてみてください。
皆さんがこのような正しい心構えを持ち続けるなら、組織の強さと一致に貢献できるのです。
これも、あなたの責任です。
エホバ神とその民を忠節に支持したケニ人の親子について考えました。
この相続財産は受け継がれていくでしょうか?
ここで、イスラエルの王たちの時代に移りましょう。
歴代第一 2:55に出てくるレカブというケニ人には、エホナダブという息子がいます。
エホナダブはエヒウ王の時代の人です。
エホバ神はエヒウ王に、バアル崇拝を根絶する任務を与えました。
そこにエホナダブが現われ、エヒウと会います。
実のところ、エヒウをサポートしたかったのです。
列王第二 10:15でエヒウは何と言いましたか?
「あなたの心はわたしと共にありますか」
「はい、共にあります」
「では、兵車に乗りなさい」
こうして乗り込ませます。
エホナダブは、神からの任務を受けたエヒウをサポートしたい、そのように忠節を公に示すことは特権だ、と感じたことでしょう。
りっぱな態度です。
「わたしはあなたと共にいます」と言ったエホナダブは、エヒウの手を取り兵車に乗り込みます。
臆することなどありません。
エヒウの任務をサポートするのを特権と感じていました。
こう言っていたのと同じです。
「わたしはあなたから離れません。何でもします。どんな仕事でも構いません。共に行きます」
エホナダブのように、神の見える組織が下す決定を忠節に支持することを、特権と考えましょう。
支持するのです。
今日も、明日も、来週も、来月も、来年も、ずっとです。
あなた自身がそうすること、それが重要です。
さて、ケニ人は王統を受け継いでおらず、注目すべき業績も、国もありません。
ですから、人の目に留まることはありませんでした。
人は見過ごしがちです。
しかし、エホバは見過ごしませんでした。
ケニ人の忠実さや、ご自分の民のためにしたことすべてをご覧になりました。
そして忘れるどころか、彼らを愛されました。
どうして分かりますか?
歴代第一 2:55でケニ人はユダの系図の中にいます。
その系図に加えられたのです。
「この家族に入りなさい」とエホバが招かれたのです。
サムエル第一 15:6によると、サウルがアマレク人を攻めた時、ケニ人が、アマレク人から離れるようにし、エホバは忠節な愛を示した彼らを守られました。
報いをお与えになったのです。
エレミヤの時代、エホバはエホナダブの子孫のレカブ人と契約を結ばれました。
何十年も忠節だったからです。
エレミヤ 35:19でエホバはこう宣言されました。
「わたしの前に常に立つ人が、レカブの子ヨナダブから断たれることはない」
エホバは忠節な忍耐ゆえにレカブ人を尊ばれ、西暦前607年のエルサレムの滅びを生き残ると約束されました。
「わたしの前に立つ人が……断たれることはない」
もしかすると、ですが、イエスの時代にもケニ人の子孫がいたかもしれません。
その中のある人は弟子になり、現在は天にいるかもしれません。
確かなことは言えませんが、そうだとしても不思議ではありません。
これは皆さんにとって価値ある教訓です。
業が制限されている土地や皆さんの業がほとんど知られていない区域にいる場合、支えてくれる人がいなくて孤独を感じるかもしれません。
しかし、エホバが皆さんの忠節さを見ておられ、忠実さを高く評価しておられることを確信してください。
ケニ人のように、皆さんの業も注目を浴びることはないかもしれません。
時には、だれの目にも留まっていない、認められていない、見過ごされていると思うかもしれません。
しかし、エホバが見過ごすことは決してありません。
ケニ人の場合がそうだったように、天の父は、皆さんが行なうすべてのことを大切にされ、忠実な奉仕を決してお忘れにならないことを覚えておいてください。
ケニ人は、エホバの是認を受けるためにわたしたちがすべきことを教えてくれます。
それは貴重な教訓となります。
すべきことは華々しいことではありません。
ただ忠節であることです。
注目されることを求めず、堅く立って忍耐します。
今、ケニ人の相続財産は皆さんに託されています。
何ができますか?
エテロになってください。
自分が愛しているのは立場ではなく、王国や兄弟たちであることを示してください。
ホバブになってください。
経験を生かして兄弟たちがさわやかさを見いだせるよう助け、乗り越えがたい状況を克服できるよう霊的なエネルギーを注ぎ込んでください。
エホナダブになってください、
「必要であればどんなことでもいつまででも行ないます」と言い、エホバとその組織を忠節に支持してください。
どんな仕事をするかは重要ではありません。
ケニ人の模範に倣って、彼らの相続財産をしっかりと受け継ぎましょう。
見過ごされがちな彼らの忠節さを決して忘れてはなりません。